館員の声:山口仁 参事官

平成29年9月5日

「国際機関で働く日本人職員の増強」

 私は当代表部で,国際機関で働く日本人職員を増強するための施策の実施や国連の研修機関であるUNITARとの連絡調整などの業務を担当しています。ここでは日本人職員の増強に関する業務について,ご紹介したいと思います。


【筆者】


国際機関における日本人職員

 現在,国連関係機関には、約800名の日本人職員がその専門知識を活用しながら勤務していますが、他の主要国に比べるとまだまだ少ないのが現状です。より多くの日本人が国際機関で活躍すれば,国際社会における日本の貢献がより明確に理解され,また,日本が真に世界の平和を願い,積極的に支える国であることも示すことができ,国際社会における日本の存在感の強化につながることが期待されます。
 国際機関の職員には,国際機関と出身国との間の「橋渡し」的な役割も期待されています。国際機関と加盟国が協同して会議やプロジェクトを実施することは多くありますが,異なる複数の組織が一緒に活動する場合,目標は同じでも細かい点で考え方が異なることがあります。このような時,国際機関と日本の両方の仕事の進め方や文化の違いなどを理解できる日本人職員の存在は,政策課題を円滑かつ効率的に進めるために重要であり,国際機関においても歓迎されています。


日本政府の掲げる目標とその達成のための施策

 日本政府は、この人数を2025年までに1000人以上に引き上げるという目標を掲げており、一人でも多くの日本人が国際機関に就職し、そしてより高い役職で活躍できるよう,その支援を行っています。外務省には国際機関人事センターが設置されており,各国際機関を担当する部局や世界各地の在外公館と協力しながら,就職希望者に対する空席情報の提供や,大学生や社会人などを対象とした国際機関就職ガイダンスの実施,後述するJPO派遣制度をはじめとした各種支援策の実施などの業務を行っています。ジュネーブにはニューヨークやウィーンなどと並び,多くの国際機関の本部が置かれており,私は同センタージュネーブ支部のスタッフとして日頃,以下のような業務を行っています。


【国連欧州本部(パレデナシオン)】


国際機関志望者増加のためのガイダンスの実施

 国際機関への就職希望者を増やし,その具体的な就職方法や,JPO派遣制度をはじめとする外務省の実施する支援方策など,国際機関への就職に役立つ情報を提供することを目的に,国際機関への就職方法に関するガイダンスを開催しています。
 ジュネーブにおいては,ジュネーブ国際機関日本人職員会(JSAG)とも連携し,ジュネーブ近郊の大学に在籍する留学生やスタディツアーで訪れた日本の高校生や大学生に対するキャリアガイダンス,日本人職員との意見交換会などを行っています。また,毎年英国にも出張し,国際機関就職ガイダンスを行っています。英国には,国際機関の業務と関係の深い開発,公衆衛生,人権などを学んでいる日本人留学生が多く在籍しており,2017年は,2月24日から26日にかけて,サセックス大学,ロンドン大学及びイーストアングリア大学の3カ所にて開催し,120名を越える方が参加しました(開催結果概要)。さらに,2017年は初めての試みとして, 4月8日,9日の2日間,ロンドンにて開催されたBALJOB LONDON GRANDE 2017に,外務省国際機関人事センターの業務の一環として参加し,国際機関への就職に関するセミナーとブースでの個別相談会を実施しました(開催結果概要)。


【国際機関への就職方法について説明をする筆者】


JPO派遣制度

 国際機関への就職を希望する若い方への就職支援施策として,JPO(Junior Professional Officer)派遣制度があります。外務省では,将来的に国際機関で正規職員として勤務することを志望する35歳以下の若手日本人を対象に,日本政府が派遣にかかる経費を負担して一定期間(原則2年間),各国際機関に派遣し,国際機関の正規職員となるために必要な知識や経験を積む機会を提供し,派遣期間終了後も引き続き正規職員として派遣先機関や他の国際機関に採用されることを目的として,同制度を実施しています。
 日本は,1974年からこの制度を実施し,これまでに累計1600人以上を派遣しており,実際に現在,国連関係機関に勤務している日本人職員(専門職以上)の約45%がJPOの経験者となっています。
 ジュネーブに本部のある国際機関にも多くのJPOを派遣しており,同制度のジュネーブにおける運用が私の役割で,JPOの派遣のため,各機関の人事部から派遣を希望するポストに関する情報を収集したり,派遣に向けた調整を行ったり,派遣中のJPOの勤務状況や正規ポスト獲得に向けた取組状況を聴取するなどの業務を日々行っています。


幹部職員の増強

 幹部職員や管理職を増やすことも重要な課題です。幹部職員は,国際機関内の意思決定に深く関与するとともに,組織の顔としてメディアにも取り上げられる機会も多く,その存在感は一際高いと言えます。かつて国連難民高等弁務官として活躍された緒方貞子さんのように幹部職員として活躍する日本人が増えれば,日本の国際社会での存在感はより一層高くなると言えます。幹部職員を増やすため,各機関における幹部ポストの空席情報の収集や就職希望者への情報提供,中堅レベルの職員を派遣するための取組を行っており,2017年より「国際機関幹部候補職員選考試験」を実施し,受験者を募集しています。


国際機関職員同士の交流の促進

 国際機関で活躍をしていくためには,幹部職員を含む他の職員と良好な関係を構築することが重要となってきます。現在ジュネーブで働いている日本人職員に,今後一層活躍してもらうため,当代表部では,幹部職員等との関係強化や,他機関の職員や代表部との関係構築,情報交換等を目的に,日本人職員と各機関の幹部職員等を招いたレセプションを開催しています。2017年は18の機関から,65名の日本人職員と55名の幹部職員等が参加しました。このレセプションでは,日本文化に親しんでいただくため,七夕や日本の夏祭りのような演出を施すとともに,たこ焼きや焼きそばなどの食事に加え,七夕の短冊作りや書道や剣玉なども楽しんでいただきました。ゲストも館員も着物や浴衣,法被やアロハシャツなどで参加し,和やかな雰囲気の中,活発な交流を行うことができました(開催結果概要)。


【国際機関日本人職員とその上司を招いたレセプション】


最後に

 ジュネーブでは連日,様々な国際会議が開催されていますが,日本人が議長や事務局幹部として会議を運営している姿を見ると,私も同じ日本人として誇らしい気持ちになります。ジュネーブには,現在,約150名の日本人が国際機関でその専門知識を活用しながら働いていますが,そのような方の活躍を広く知っていただきたいと思い,当代表部のウェブサイトに「ジュネーブの国際機関で活躍する日本人職員」というページを設けました。このページを見て日本人が国際機関で活躍していることを知り,自身も国際機関で働きたいと思う方が多く出てきてくれることを祈っています。