代表部の仕事:WMOについて

令和5年7月18日
WMOについて
 
鈴木 健介 参事官

1.WMO(世界気象機関)とは
 皆様は「WMO」という機関をご存じでしょうか?気象業務関係者や研究者の方には知られていても、一般の方には馴染みが無いかも知れません。今回は私が担当してきたWMOについて御紹介します。
 WMOは、正式名称をWorld Meteorological Organization(世界気象機関)といい、WHO(世界保健機関)やUNESCO(国連教育科学文化機関)などと同様、国連の専門機関の1つです。
 WMOは、世界の気象業務の調整・標準化・改善、気象に関するデータの各国間での効果的な交換を推進するため、1950年に設立されました。2023年時点で193の国と地域で構成されています。
 日本は1953年に加盟し、日本の歴代気象庁長官が執行理事として事業計画や予算の決定に積極的に関与してきました。
 現在WMOでは、世界の気象観測データの充実化とともに、その貴重なデータを用いて世界の様々な問題に貢献しています。ここでは、具体的な活動分野について、いくつか紹介します。
 
2.早期警戒イニシアティブ
 近年、世界的に台風や大雨といった災害による被害が増加しています。WMOは、気象災害からの被害を未然に防ぐため、早期警報システムの整備を進めています。2022年3月にグテーレス国連事務総長が、地球上の誰もが5年以内に早期警報システムによる保護を受けられるよう、国連が率先して新たな行動を起こすことを発表しました。WMOはUNDRR(国連防災機関)などの他機関とも連携し、昨年のCOP27でアクションプランを公表するなど、この取組をリードしていますが、具体的な活動はまだこれからです。
 日本は、災害に関する技術・知識・経験を活かし、ジュネーブにおける様々な場において議題提起するなど、存在感を示しています。
 

早期警戒アクションプランの概要
(災害リスクの把握、観測と予測、迅速な伝達、備えと対応能力の4つの柱)

3.官民連携
 気象に関する業務は、官が全てを担うには限界があるため、官民が連携して対応していく必要があり、WMOも官民連携の重要性を認識しています。
 例えば、気象予報においては、民間部門による農業、観光、保健分野などにおけるニーズの高い気象データの提供が広まっています。また、前述の早期警報イニシアティブにおいても、人々に警報を伝達する手段として、通信事業者が果たす役割は大きなものになっています。
 日本では気象業務法の枠組みの中で官民連携を進めており、官民のバランスが取れた制度運用をしています。WMOにおける官民連携分野において、先進事例となっている日本が率先して取り組んでいくことは重要です。WMOの官民連携部門の幹部ポストに日本人が在席しており、日本の経験を活かした貢献も行っています。

4.日本とWMOとの関係
 前述のとおり、日本の気象庁長官は、長年にわたりWMOの執行理事を務めており、WMO事務局と緊密な関係を築いています。また、官民連携分野でも、日本の役割は大きいものがあります。
 これに加え、気象衛星「ひまわり」による高精度な観測データをアジア・太平洋地域の国々にも提供しています。
 このように世界の気象分野において大きな役割を担う日本が、円滑にWMOの活動に貢献できる環境を作るため、代表部では、日本とWMO事務局の良好な関係の構築を図っています。
 本年5月から6月にかけてWMO総会がありましたが、加盟国が一堂に会するこの機を捉えて、代表部大使・気象庁長官主催のレセプションを開催し、日本の取組を紹介しました。
 

WMO総会の様子
(レセプションの様子は以下参考)
https://www.geneve-mission.emb-japan.go.jp/itpr_ja/event_20230525.html
また、同総会において執行理事選挙が行われ、日本の気象庁長官が、引き続き執行理事に選出されました。

5.ガバナンス問題
 ガバナンスの問題については、他国の代表部担当者とともに、WMO事務局に対して改善に向けた指摘を直接行っています。WMOの組織運営について問題点があれば、加盟国がその改善を求めていくことは当然のことです。組織のガバナンスがしっかりしているからこそ、その活動に十分な成果をもたらすことができます。WMOのような比較的小さな組織であっても、具体的な提案を示し、直接事務局長に対して質問するなど、WMO事務局と一緒になって解決に向けて取り組んでいきます。
 
オンライン会議でターラス事務局長に質問する筆者の様子

6.最後に
 WMO事務局職員の多くは気象の専門家です。私は気象の専門家ではありませんが、WMO事務局職員との良好な関係を築くことにより、柔軟に対応してもらえました。
 また、多国間外交では、他のジュネーブ代表部と緊密にやり取りをしています。ある時には他国からサポートしてもらい、また別の機会には日本がサポートしました。また、時には食事を交えながら意見交換するなど、良い思い出を作ることができました。
 このような関係性を将来にわたって継続させ、WMOの活動における日本のプレゼンスを高めていければと思います。