代表部の仕事:国際保健の心臓部としてのジュネーブ

令和8年7月14日
国際保健の心臓部としてのジュネーブ
 
松村漠志 一等書記官

 
1.はじめに 
 スイスのジュネーブは、ニューヨークと並ぶ国連の主要拠点であり、「多国間主義の中心地」と呼ばれています。特に国際保健分野では、多くの重要な国際機関がこの地に本拠を置いています。これらの国際保健関連の国際機関のうち、世界保健機関(WHO)、世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバル・ファンド:GF)、そしてGaviワクチンアライアンス(Gavi)について、どのような役割を担い、日本がどのように貢献し、そして私たち代表部がどのような仕事をしているのか、ご紹介させてください。

2.世界保健機関(WHO)
(1)概要:WHOは1948年に「全ての人々が可能な最高の健康水準に到達すること」を目的として設立された国連の専門機関です。主な活動としては、病気の治療・予防のためのガイドラインの策定、医薬品・医療機器の評価及び基準づくり、健康危機等への緊急対応、科学的エビデンスとデータの収集及び共有が挙げられます。
(2)日本政府の関わり:2026-2027年の分担金6.9%を負担する主要なドナー国であり、西太平洋地域を代表して執行理事会に参加(現任期:2025-2028年)しています。
(3)代表部の業務:WHOから日々発信される情報を日本政府の各省庁へと共有しています。これらの情報発信の中には、パンデミックに関する情報など迅速性が求められるものも含まれており、緊張感を持って臨んでいます。また、執行理事会やWHO総会といったWHOのガバナンス会合に参加する日本政府代表団の支援も行います。
 

WHO本部。正面に日本を含む加盟国の国旗が掲げられています。


世界保健総会で演説するテドロス・アダノムWHO事務局長。
 
3.世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバル・ファンド:GF)
(1)概要:2002年にHIV/AIDS、結核、マラリアという3大感染症と戦うために設立された国際的な基金です。3大感染症対策を支援するために低・中所得国が実施する予防、治療、感染者支援、保健システム強化に資金提供しています。先進国だけではなく、支援を受け入れる国、企業や民間財団、先進国と途上国のNGO、感染症の当事者のグループ、国際機関など多くの組織が参画して運営されていることが特徴です。
(2)日本政府の関わり:主要ドナーの一つとして理事会に参加し、運営方針を決めています。理事会の全体会合や少人数会合などを組み合わせて理事間の信頼を醸成し、受益国への資金配分など困難な議題について合意点を見出します。
(3)代表部の業務:理事会に参加する日本政府代表団の支援に加えて、戦略委員会のメンバーとして三大感染症の資金配分調整やGFからの卒業国の支援などの課題について議論しています。


世界エイズ・結核・マラリア対策基金の戦略委員会で発言する筆者。
 
4.Gaviワクチンアライアンス(Gavi)
(1)概要:2000年に設立された、低・中所得国において、予防接種の普及を支援することを目的として設立された官民連携パートナーシップです。主な活動はワクチン購入の資金提供ですが、近年は健康危機対応のためのワクチン備蓄や、地域でのワクチン生産を促す活動も行っています。
(2)日本政府の関わり:主要ドナー国の一つとして、理事会及び戦略に関わる委員会に参画し、運営方針の決定やワクチン投資戦略など重要な戦略へのインプットを行っています。
(3)代表部の業務:理事会及び委員会に参加する日本政府代表団の支援を行っています。


グローバルヘルスキャンパス。GFとGaviを含む多くの保健関連国際機関が集まっています。

5.終わりに
 これらの機関はそれぞれ重要な役割を果たしている一方で、従来から機能の重複・断片化が指摘されてきました。国際保健分野のODAの減少など大きな変化も相まって国際保健分野の国際機関の役割について見直す機運が高まり、WHOが招集しグローバル・ヘルス・アーキテクチャー(GHA)を議論する共同プロセスが開始されることとなりました。加盟国や各機関の長で構成されるタスクフォースメンバーが1年間協議を行い、来年のWHO総会に新しいGHAの案を示す予定です。1年後のWHO総会に是非ご注目ください。