第111回ILO総会 本会議政府代表演説(羽生田厚生労働省副大臣)(2023年6月13日)
第111回ILO総会 本会議
(The Plenary of the International Labour Conference, 111th Session, 2023)
政府代表演説
1. はじめに
○ ウングボ新事務局長の下で、新型コロナウイルス感染症パンデミック下における困難な状況を乗り越え、4年ぶりに完全に対面でILO総会が開催されることをお喜び申し上げます。各国の政労使の皆様と再び顔を合わせて議論できることを嬉しく思います。事務局長とILO職員の皆様に対し、ILO総会の開催への御尽力に感謝いたします。
2. G7倉敷労働雇用大臣会合について
○ はじめに、本年日本政府が議長国を務めたG7倉敷労働雇用大臣会合の成果についてお伝えします。
○ 本会合では、人口動態の変化、DX・GXといった構造の変化を背景に「人への投資」の重要性が増す中で、リスキリングは、労働者がそうした社会変化に対応するための能力向上にとどまらず、生産性向上や賃上げにつながるものであり、「経費」でなく「投資」そのものであるとの認識をG7各国で共有しました。その上で、「人への投資」を進めることにより、労働者の幸福及び健康と社会・経済活力の好循環につなげていくことを我々の使命として本会合の宣言に明記しました。
○ 「人への投資」は、様々な構造変化の中で、今回の事務局長報告のテーマである「社会正義」を目指し、実現するために、すべての国で大切な課題だと考えています。今回のG7労働雇用大臣宣言に盛り込んだ施策の着実な実施に向けて、引き続きILO、労使や各国政府と協調して取り組んでまいります。
3. 事務局長報告のテーマ(社会正義)について
○ 続いて、事務局長報告について日本の考えを述べます。本報告では、「社会正義」は、労働のみならず医療や社会保険など幅広い射程を含んでいます。また、こうした幅広い社会的保護とディーセント・ワークの実現は相互に影響していると示されています。
○ まさに日本は、国民皆保険制度等の社会保障制度において普遍的な人権を保障するとともに、すべての労働者のディーセント・ワークの実現のために取り組んできましたが、これは社会正義の実現にも資するものと考えます。こうした日本の経験からも、様々な政策分野の政策の一貫性を目指す「社会正義のためのグローバル連合」構想は支持できるものです。
○ さらに具体的な施策を紹介させていただくと、近年では、障害者雇用や女性活躍推進といった分野の取組を強化しました。
○ まず、障害者の方々が、地域や職場において、本人の希望に応じて、その方らしく暮らし、働くことができる体制作りを目指すための改正法が昨年12月に成立しました。この改正法の内容の1つとして、障害者の多様な就労ニーズに対する支援及び障害者雇用の質の向上の推進を図っています。
○ また、職場における女性活躍を推進するため、昨年4月から女性の活躍に関する各企業の行動計画策定義務の対象を拡大したほか、男女間の賃金差に関する企業における情報公表や、「産後パパ育休」の取得推進に取り組んでいます。
○ こうした国内の施策に加え、ディーセント・ワーク実現のためのILO ・日本マルチバイプログラム等を通じた支援は今年で50年目となりました。同プログラムでは、世界の国々の実態やニーズに合わせ、労働安全衛生水準の向上や社会保険制度整備などの様々な技術協力を行っています。こうした技術協力の取組を通じて、グローバル・サプライチェーン上の課題解決にも貢献しています。
○ 日本は、ILO創設に関わった原加盟国として、この他にも様々な労働雇用に関する施策に取り組んできましたが、こうした施策の1つ1つがディーセント・ワークの実現につながり、ひいては社会正義の実現に資するものであると確信しています。
4.おわりに
○ 日本政府は、社会的パートナーとの対話を大切にしながら、ウングボ事務局長の新体制と一層の協力を進め、仕事の世界における永続的な課題に取組むためのあらゆる努力を行ってまいります。
○ ご清聴ありがとうございました。