ジュネーブの国際機関で活躍する日本人職員(世界保健機関(WHO)・渡部 明人さん)

2019/8/26


【世界保健機関(WHO)・渡部 明人さん】

Q 現在,渡部さんが担当されている業務について教えてください。

 

 WHO(世界保健機関)内にあるUHC2030事務局でテクニカル・オフィサーとして働いています。現在はUHC2030というマルチステークホルダー・パートナーシップの仕事をしています。具体的には,ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(以下UHC)という,「すべての人々が基礎的な保健医療サービスを、必要なときに、負担可能な費用で享受できる状態。」という枠組みを作るためのアドボカシーやナレッジの共有,UHCに関する政治的なモメンタムを維持していくといった仕事をしています。特に,今年2019年9月には国連のハイレベル会合でUHCがテーマになります。また,昨年から国連の日として12月12日がUHCの日が設定されました。こういったプロジェクトをリードしています。

 



Q 国連機関で働く魅力について教えてください。

 

 国連機関で働く魅力は,新しい枠組みをグローバルレベルで作っていくことができるということです。プロジェクトを作る,資金を調達する,チームを編成してプロジェクトを実施していく,そういった一連のダイナミックな流れに関わっていくことができます。
 また,国連組織は比較的フラットな組織なので,あまりランクを気にせずに職員同士で議論をして物事を作っていくことができるのも魅力です。
 さらに,ワークライフバランスもしっかりしているので,仕事と家庭を両立していくことができるのも魅力です。

 



Q 国連機関の職員になろうと思った「きっかけ」について教えてください。

 

 私の場合,マニラでの経験が最初のきっかけとなりました。大学の医学部2年生の時に,ボランティアでマニラの診療所で働く経験をしました。そこで,貧困層の子供や患者を診察して彼らに治療を施しましたが,彼らはまたすぐに戻ってきてしまう,薬を渡してもなかなか治療がうまくいかないという現状を見ました。この経験から,貧困層に対する医療の問題,医療によって貧困が生まれてしまう問題,貧困から病気になってしまうといった問題に関心を持ちました。そしてそういった問題を防いで,子供達や患者を救うために必要となる保健システムを強化していく仕事に携わりたいと思うようになりました。
 その後,学生時代にNGOの仕事をするなどしていく中で,国連機関で自分のやりたい仕事ができるということに気づき,時間をかけながら徐々に仕事を見つけていきました。

 

Q 具体的にどのようにして,渡部さんは国連機関職員になられましたか。

 

 大学医学部を卒業して初めの3年間は,臨床医として病院で働きました。臨床医として働く中で,途上国で仕事をしたいとの思いが強くなり,たまたま青年海外協力隊で公衆衛生のポストがバヌアツ共和国にあるということを知りました。このスキームでバヌアツ共和国に行き同国の保健省で働きました。バヌアツでは,地域医療や健康増進・予防啓発に関する政策作りに関わりました。
 この経験から,保健システム,医療経済といった分野の仕事が必要とされていることがわかり,イギリスに留学しロンドン大学衛生熱帯医学大学院(LSHTM)とロンドンスクール・オブ・エコノミクス(LSE)のジョイントプログラムで医療経済学・保健財政学を学びました。その頃,医療経済の分野の重要性が高まってきていましたが,この分野では必要な人材が不足している状況でした。そこで,戦略として,この分野で仕事をしていくことでUHCに貢献できると考えました。その後,外務省国際保健政策室で任期付職員としてUHCの推進をSDGsの枠組みで実施していく仕事をしました。そして,ここで働いている時にJPO試験に応募し合格して,JPOとしてWHOに入りました。
 WHOに入ってからは,自分で保健財政のプロジェクトしながら新しくUHCのパートナーシップを作るという仕事に関わり,新しくできたポストに応募し採用され正規職員になりました。

 

Q 国連機関の職員に必要なことや,渡部さんが国連機関で働く上で普段心がけていることについて教えてください。

 

 国連機関の職員に必要なこととして,私が特に気をつけているのは,いかに自分自身の情熱やモチベーションを維持していくかということです。特に,日本の組織と違って,国連機関では自分で仕事を見つけていかなければならない,自分のポストがいつなくなるかわからないという状況の中で,自分自身でキャリアのプランを戦略的に考えていくことが必要となります。
 そういった中で,国連機関に入って初めの10年間は身につけなければならないことは決まっています。例えば,現場で専門的な経験を積む必要があるとか,修士号や博士号,途上国の経験を積むといったことです。こういった土台を築くことを意識していると,10年はあっという間に経ってしまいます。土台を築いたら,次に必要となるのは,自分の目指す次のキャリアにつながるよう,自分の仕事でしっかりとアウトプットを出して評価をしてもらうということになります。

 

Q これから国連機関職員を目指す方に向けて,メッセージをお願いします。

 

 自分が「やりたい」ということも非常に大事ですが,いかに自分の力やバックグラウンドで価値があるものを創造していくことができるのかということも,国連機関で働くためには必要となります。もちろん自分のやりたいことができるところを選ぶことは重要ですが,それだけではなく自分が組織に貢献できることや分野を積極的に探していくことも重要です。
 つまり,熱い情熱を持ちながら働くことと,その思いを実現していくために必要な戦略を冷静に考えていくこと,この2つを組み合わせて胸に抱いて働いていくことが国連機関で働く上でも,世界を変えていくためにも必要で重要なことと思っています。ぜひ皆さん頑張ってください。

 


おすすめ情報