「我が国の経済外交2018」 アランチャ・ゴンザレス国際貿易センター(ITC)事務局長へのインタビュー

平成30年4月3日

― ITCの役割と目的


ITCは,零細中小企業(Micro, Small and Medium Enterprises: MSMEs)の国際貿易への参画の促進,及びそれを通じた持続可能で包摂的な開発への支援を目的に,国連とWTOが共同で設置している機関です。
全世界の企業の9割はMSMEsで,民間雇用の3分の2以上を担っています。途上国のMSMEsが競争力を付けて国際貿易や投資に関与していくことは,人々,特に女性や若者,貧困層にチャンスをもたらします。
ITCは途上国のMSMEsが貿易から良いインパクトを得られるよう,これらの国の政府機関に対する良好な政策環境実現のための支援・助言のほか,現地の商工会議所等が行うMSMEs支援の活動に協力しています。
ITCの支援の約85%は後発開発途上国,内陸開発途上国,小島嶼開発途上国,サブサハラアフリカ,ポスト紛争国及び小規模脆弱経済国に集中しています。これらの国のニーズは最も大きく,必然的に最も大きな恩恵をもたらします。



― 貿易についての情報提供


1964年の創設以来,貿易及びマーケットに関する情報提供はITCの活動の中核です。ITCは,世界の70万を超える登録ユーザーに対して,潜在的なマーケットの特定,関税・非関税双方の参入障壁の調査,競争環境の分析等を行うための様々なオンラインツールを無償で提供しています。
2017年12月には,国連貿易開発会議(UNCTAD)及びWTOと共同で,新たに「MSMEsヘルプデスク」を立ち上げました。これは,関税率,付加価値税,衛生・安全基準,規制機関,諸費用等に関する情報を一つのインターフェイスに集約した使いやすいオンライン・ワンストップショップです。貿易に従事するユーザーは,必要な事務手続や書類に関する情報を全てここから入手できます。また,貿易フェアや関連の産業イベントについての情報も提供します。



― 女性の経済的エンパワーメント


ITCの取組は国連の持続可能な開発のための2030アジェンダに完全に合致したものです。2030アジェンダでは,貿易を持続可能かつ包摂的な成長を達成するための重要な手段と位置付けています。これらの目標の達成のため,ITCは女性や若者,貧困層や避難民等が貿易に参画することへの支援を特に重視しています。
そのような取組の一例がSheTradesイニシアティブです。2020年までに百万人の女性企業家を国際市場に結び付けることを目標に,企業や政府,市民社会組織が女性のグローバル経済への一層の統合に取り組む上での参考となる指標を提供したり,「SheTradesアプリ」を開発して,世界中の女性企業家に情報共有やネットワーク構築のための独自のプラットフォームを提供しています。



― 日本に期待する役割


ITCは,女性の社会的・経済的参画を促進する日本の取組を全面的に支援します。私(ゴンザレス事務局長)は,2016年,2017年と,日本政府が主催する国際女性会議WAW!に出席し,女性中小企業家が世界貿易において直面する課題と機会についての私たちの見方を共有しました。
日本とITCの連携は,2008年からのEthical Fashion Initiative支援に始まり,2017年にはスーダンのWTO加盟支援や電子商取引による服飾小物の国際販売促進を通じたシリア国内避難民女性支援等に拡大しました。日本はルールに基づく自由な貿易体制の維持においても重要な役割を果たしています。ITCと日本とのパートナーシップを更に深めていきたいと思います。


【アランチャ・ゴンザレス国際貿易センター(ITC)事務局長】(提供:ITC事務局)

※本インタビューは,「我が国の経済外交2018」(外務省経済局著,日本経済評論社発行(2018年01月))に掲載されています。