伊原大使のWTO一般理事会議長の離任挨拶(平成31年2月28日)
2月28日、WTOにおいて一般理事会が開催され、加盟国間でWTOが直面する課題について議論が行われました。伊原大使は、本会合で、一般理事会議長としての1年の任期を終え、会合の最後に離任挨拶を行いました。
一般理事会はWTOの常設機関の中での最高議決機関であり、2年に1度開催される閣僚会議の会合から次の会合までの間、その任務を代わって遂行します。
(出典:WTO事務局)
伊原大使の挨拶文は以下のとおりです。
一般理事会(以下、一般理)議長を務めたことは大変光栄なことであり、全加盟国に対し、その支援と協力に心から感謝申し上げる。また、アゼベド事務局長とはこの1年数多くの問題に取り組むことができ嬉しかった。アゼベド事務局長の友情にも感謝申し上げる。
一般理議長としての仕事を通じて、この組織がどのように機能しているかを学びより理解することができ、WTOが加盟国主導の組織であることを今一度認識した。何か新しいことを始めるにしても、物事を前に進めるにしても、常に加盟国からのイニシアティブが必要であり、この組織では、加盟国からの行動なくしては何も起こらない。イニシアティブは、提案の提出に限られるものではなく、他の加盟国への質問、議論の論点の提起、事務局に支援を求めること等,これらいずれの行動も、意義あることを始める、あるいはある問題において進展する機会を提供し得るのである。
議長はこのプロセスにおいて重要な役割を持っている。ある取組が加盟国からの関心を十分に得たように見えたら、議長は加盟国とコンサルテーションを開始できる。実際、コンサルテーションは、仕事を行う上で議長が使うことのできる最も有益なツールだと思う。コンサルテーションにより、議論になっている問題に対する加盟国の考えの感触を得られるだけでなく、進め方についての議長自身のアイデアを試すこともできるようになる。コンサルテーションは、いかなる形のコンセンサスに辿り着く上でも必要不可欠なものである。コンサルテーションが成功した後、議長は全加盟国に取組の結果を報告しに戻ることができる。それほど頻繁に起こることではないものの、全てがうまく行った場合に、我々は何かに合意することができるか、いくつかのイシューについて前進することができるのである。
どの議長も認識している重要なもう一つのことは、議長の良いかじ取りは事務局の熟達した支援によって初めて可能になるということである。通常会合の議長は毎年交代し、自分自身が紛争処理機関議長に就任した時にそうだったように、多くの人が議長という役割になじみがないと思う。WTO事務局は、必要な情報を全て提供し、また、従うべき確立された手続を示すことで,それぞれの新しい議長の役割を円滑にしている。一般理議長としての自分の場合には、ドプラドTNC部長を始め一般理・TNC部のチームに多くを負ってきた。彼らの的を射た助言と効率的な支援のおかげで、ミッションを遂行することできた。心からの感謝の意を表したい。