第98回ILO総会渡辺厚生労働副大臣日本政府代表演説 議長、ありがとうございます。 はじめに、本年、創立90周年を迎えたILOに対し、心からお祝いを述べたいと思います。また、世界の多数の国で90周年記念行事が成功裡に開催されたことをお喜び申し上げます。日本でもILO及び労使と共同してシンポジウムを開催しましたが、多くの参加者を得て実りあるシンポジウムとなったと考えております。
昨年来の金融経済危機は世界各国に深刻な影響を及ぼしておりますが、わが国においては特にそれが顕著です。2009年1月から3月期のGDPは、年率に換算して14.2%下落となり、下落幅は戦後最悪となりました。失業率も昨年10月の3.8%から本年4月には5.0%まで上昇しました。この危機から脱却するためには、あらゆる手段を講じなければなりません。 そのような中で、ソマビア事務局長が「世界的な雇用危機に立ち向かう-ディーセント・ワーク政策を通じた回復」という報告をまとめられたのはまさに時宜を得たものだと考えます。また、世界的労働協定という大きな枠組みと、採用すべき個別の政策を具体的に記述しているその内容は、我が国を含め各国政府、またそれにとどまらずソーシャル・パートナーにとっても具体的な指針となる非常に有意義なものであり、我が国はこれを高く評価いたします。
第1には、金融経済危機に対する雇用対策について述べたいと思います。このような世界的経済危機下においては、政府と社会的パートナーが一致協力して雇用対策を講ずることが、人々の安定的な生活を確保するための近道であると考えます。具体的には、まず、これ以上の失業を防ぎ、雇用維持に努めることが重要であります。また、失業者が早期に生産的な仕事につくための取り組みも欠かせません。そして、それを支えるためには、効果的な雇用・労働市場政策の実施、失業手当の拡充及び職業訓練・職業紹介の拡充・強化が必要であります。 我が国においては、本年3月、雇用の安定と創出の実現に向けて、雇用の維持、職業訓練、職業紹介、訓練期間中の生活保障、雇用創出の実現などについて、政労使の三者がそれぞれ具体的に取り組むべきことを合意しました。この取組は、我が国が雇用危機に立ち向かう大きな一歩であると考えております。 我が国政府としては、この合意に沿って対策を講じるとともに、政府と社会的パートナーが一丸となって、経済危機を乗り越えるために、今後とも社会対話の促進を図っていきたいと考えております。
第2に、雇用危機におけるILOのリーダーシップについて述べたいと思います。金融経済危機による雇用危機は世界の雇用状況の悪化を招いており、ILOにはそれに歯止めをかけ、改善するための強い指導力が求められております。
我が国においては、雇用・生活の安定を確保することを通じ、国民の暮らしの不安を取り除くことが何よりも重要と考え、おもに雇用創出、雇用維持、セーフティネットの強化の観点からさまざまな雇用対策を実施しています。このような我が国の対策について、グッドプラクティスとしてILOへ情報提供をこれまでも行ってきたところであり、このような取り組みを引き続き進めることにより、ILOが雇用危機に対するリーダーシップを発揮するために、日本としても協力を惜しみません。 また日本は、これまで失業保険制度構築や職業紹介機関の強化について、JICAを通じたバイの協力を行ってまいりました。来年度からは、それに加え、ILOのマルチバイのスキームを用いて、アジア太平洋地域を支援していくことを検討しているところであり、ディーセントワークの実現に向けた協力を進めてまいります。また、ILOが掲げる「グリーンジョブ・イニシアチブ」の考えに賛同し、地球環境の問題に配慮した持続可能な雇用を実現するための協力も進めているところです。 我が国を含め世界各国はこの経済危機による雇用危機に全力で取り組んでいるところでありますが、世界の労働市場が立ち直るためには、ILOの活動支援は大変重要であります。100年に1度と言われる世界的な経済危機下において、ILOの活躍は一層望まれるものであり、我が国は今後ともILOを支援することを再度表明いたします。 最後になりましたが、我が国は、ILOの「すべての人にディーセント・ワークを」という考えに賛同しており、ILOの活動に対し今後とも協力を惜しまない所存です。 ありがとうございました。 |