第93回ILO総会本会議
戸苅厚生労働事務次官 日本政府代表演説
2005年6月7日(火)
(はじめに)
[指名を受けて]議長ありがとうございます。
水と緑の世界都市ジュネーブの地で開かれているこのILO総会において、昨年に続き再び日本政府を代表して演説する機会に恵まれたことを光栄に思います。
最初に、我が国は、ILOが引き続き強固な意志をもって「ディーセントワーク」という基本目標に向かって前進する姿勢を強く支持するとともに、この目標に向けてのILO、労使、加盟各国の努力に対して敬意を表します。
近年の急速なグローバル化は、世界中に新たな経済機会を創出しましたが、その陰の部分に多くの人々が取り残されているのも事実であります。我が国は、「グローバル化は公正で全ての人に開かれ、その恩恵・利益が行きわたるものとなるべきであり、そのためには、全ての人がディーセントワークを享受するという目標が重要である」というILOの問題意識を共有し、ILOの役割の中で行われる取り組みを支援するものであります。
(グローバル化と若者)
グローバル化の影響は、弱い立場の者を直撃します。その意味で、今回の総会の議題の1つである若者はグローバル化の負の影響を受けやすい存在であります。一方で、若者は豊かな創造性、柔軟性を有しており、知識や経験を蓄積することにより、広く社会の発展に寄与する大きな可能性を秘めた「資産」であります。こうした若者の潜在能力を引き出すことにより、それぞれの地域の経済社会が活性化され、ディーセント・ワークを生み出す基盤が構築されるものと確信しております。
(若年雇用シンポジウム、マルチバイプログラム)
我が国は、昨年12月、「グローバル化と若者の未来に関するアジア・シンポジウム」を、ILOと共に開催し、ソマヴィア事務局長にも出席していただきました。そして「若者は資産である」というメッセージをアジアから世界に向けて発信しました。この成果を踏まえ、我が国は、2006年からILOと協力して若年者の雇用のためのプロジェクトを開始することを計画しています。
(事務局組織の効率的運営)
議長、
我が国は、世界中で展開されるILOの目標と活動を高く評価し、支援するものであります。しかしながら、いずれの組織においてもその有する資源の効率的な利用については、不断に見直しを行う必要があります。特に、各国政府が厳しい財政事情の下で支払っている分担金に基づく予算については、可能な限り効率的に運営し、安易な増大を避けねばなりません。また、管理費用の徹底的な削減により、現場の活動に充てる予算をより充実させる努力も不可欠です。
そのためには、人事構造の見直しによる人件費の圧縮や組織の活性化が必要と考えております。また、現場(フィールド)に根ざした効果的な技術協力の遂行などを目指し、一層の分権化とそのための人事の流動化を促進することも重要と考えます。事務局の一層の取組みを期待するものであります。
(総会のあり方)
議長、
今般の事務局長報告では、この総会のあり方そのものに関する問いかけも行われています。世界中の政労使が一同に会し、その知恵と経験を持ち寄って、未来の労働をデザインするこの総会を現代的かつ相互的な方式を兼ね備えたものにし、より実りの多いものにすることは非常に重要な問題提起と考えております。
特に事務局長が提示しているパネルディスカッションのアイデアは興味深いものでありますし、インターネットを通じた世界中継という方法もあるかもしれません。
(公務員制度改革)
ILOの改革についてお話ししてきましたが、我が国の公務員制度改革については、まず国内において政府と関係者が真剣な話合いを行うことが重要と認識しており、これまで、関係大臣と組合代表者との間を含め、様々なレベルで労働組合側との話合いを進めてきております。政府としては、引き続き、こうした枠組みの下で改革に取り組んでいくこととしており、今後とも、国内における政府と労働組合側との話合いの動向を見守っていただきたいと考えております。
(結び)
我が国には「目は臆病、手は勇気」という言葉があります。
世界に横たわるあらゆる貧困や不公正を目にするとき、ILOが理想に掲げる社会の実現は遙か遠くに感じられ、時に挫けそうになる気持ちも芽生えるかもしれません。しかし、その気持ちに負けずに手近な課題を一つ一つ着実に解決していけば、いつの間にか大きな発展を得ているものだということをこの言葉は教えてくれています。
我が国は今後ともILOと手を携えて困難に立ち向かっていくことをお約束して私の演説の結びといたします。
ご清聴ありがとうございます。
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