第96回ILO総会本会議
第96回ILO総会において、日本政府を代表して発言する機会を与えられ、光栄に存じます。このILO総会は、我々加盟国代表による意見交換の場であり、また、ディーセント・ワーク(適切な仕事)の実現に向けた決意を共有する場であると認識しております。
まず、「ディーセント・ワークと持続可能な成長」と題する報告書をまとめられた事務局長に謝意を表したいと思います。報告書においては、今日のグローバル化と経済成長の下で、ILOにとってどのような課題あるいはチャンスが存在するのかが、明快かつ簡潔に提示されております。
ここで改めて、ディーセント・ワークに対する日本政府の従来からの全面的な支持を表明するとともに、ディーセント・ワークを推進するILOの活動と加盟各国における政労使の取組を評価したいと思います。
ディーセント・ワークの概念は、ILOの創設時からの役割を変更するものではなく、むしろ、より統合された形で再確認するものです。また、私としては、ディーセント・ワークは、一方では労働の価値や人間らしい生き方の尊重という点についてのしっかりした基本軸を提供する一方で、それぞれの社会の固有の状況に応じて多様な姿をとりうる柔軟性を持つ、含蓄の深い概念であると捉えております。さらに、ディーセント・ワークは、例えば、地球温暖化が進む中重要性が増しており、事務局長報告でも取り上げられている「グリーンジョブ」への移行を含め、雇用の創出、改善や移行など労働のすべての場面において適用される汎用性のある概念であります。
このような固有性や多様性、汎用性に着目し、以下、3点申し上げます。
1点目は、事務局長報告においても指摘されているとおり、ILOと他の国連機関との連携を強化することの重要性であります。
2点目は、各加盟国の多様性を踏まえたILOの支援の必要性です。ただいま三者構成の利点について述べましたが、ILO自身が、各国の政労使が議論した結果に即した支援を提供する機能をさらに向上させることが求められています。これは技術議題の「ILOの機能強化」に関する事務局報告でも述べられているとおりです。
3点目として、今申し上げたような相乗効果を生み出す作業に、我が国としても主体的に参加する決意を表明したいと思います。昨年開催された第14回アジア地域会合では、「アジアにおけるディーセント・ワークの実現に向けた10年」が宣言され、地域全体でのディーセント・ワーク実現のため、地域内加盟国が共同して取組を進めることが謳われました。その一環として、我が国政府としては、特にILOと他の国連機関との協働を想定した政策展開に関心をおきつつ、引き続き、アジア地域での貢献を行っていく所存であります。また、アジアという多様性豊かな地域における経験交流のための格好の機会として、本年8月に北京で開催予定のアジア地域フォーラムにおける議論に期待しております。
最後に、結論に代えて、我々の多様な願いは、「すべての人にディーセント・ワークを」という一つの目標に集約されるものであることを申し述べたいと思います。 ありがとうございました。
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