ジュネーブの国際機関で活躍する日本人職員(世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)髙山 眞木子さん)

【渉外局・ドナーリレーションズ部 ドナーリレーションズ担当官 髙山 眞木子さん】
 

Q1 所属機関の役割や目的について教えて下さい。

 

ジュネーブにはグローバルヘルスの専門機関や援助機関が多くあります。私の働く世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)は、世界の三大感染症と言われるエイズ・結核・マラリアの流行を終息させるために2002年に設立された国際機関です。2000年のG8九州沖縄サミットで、議長国の日本が感染症対策をサミットの主要議題として初めて取り上げたことが、グローバルファンド設立の発端となりました。

グローバルファンドは、国連システム内に新たに作られた基金ではなく、政府、民間セクターの企業や財団、市民社会、感染症の当事者のコミュニティなどにより成り立つ21世紀型の新しい官民パートナーシップです。国際社会から毎年約40億米ドルを集め、100カ国の開発途上国が行う三疾病の予防、治療、保健システムの強化を支援しています。グローバルファンドが目標とする三大感染症の流行終結は、持続可能な開発のための2030アジェンダ(SDGs)の中に組み込まれています。グローバルファンドの2017年~2022年の戦略には、SDGsの実現に向けて、(1)三大感染症対策のインパクトの最大化、(2)強靭で持続可能な保健システムの構築、(3)人権やジェンダー平等の促進、(4)より多くの資金調達と、4つの目標を掲げています。

 

Q2 現在の仕事について教えて下さい。(やりがい,大変なこと,今後の目標なども)

 

グローバルファンドに勤務して8年目になります。2014年から渉外局のドナーリレーションズ部で、ドナーリレーションズ担当官として働いています。グローバルファンドが集める資金の95%はG 7諸国をはじめとする各国の政府から、5%は企業、民間財団や個人から拠出されています。ドナーリレーションズ部は、ドナー国からの資金調達を担当し、特定のドナー国と蜜に連携をとる仕事です。11人のチームメンバーの言語や文化的な背景によって担当するドナー国が分担されています。私は、日本、オーストラリア、ニュージーランド、タイの4カ国を担当しています。

日々の仕事としては、ドナー国からの質問や要望を、グローバルファンド内の担当部署に照会しドナー国に回答したり、グローバルファンドの幹部とドナー国との会合や幹部のドナー国への訪問の準備をしたり、そして大きな国際会議のサイドイベントなどを企画・準備しています。日頃から担当のドナー国との良好な信頼関係の構築と維持が、円滑な資金調達につながります。

 

部内スタッフとミーティングで各ドナーの近況報告や
企画中の会議、イベント、出張などの情報を共有。

 

グローバルファンドは、 3年に一度、三大感染症対策に必要な資金額を算定し世界から資金調達をしています。増資( replenishment・追加の資金調達)と呼び、各ドナーが資金拠出を表明する「増資会合」とその半年ほど前に開かれる「増資準備会合」と二つから成りたっています。ドナー国のグローバルファンドに対する拠出は、義務的な拠出ではなく、各ドナー国の任意拠出金により支えられています。増資会合で担当のドナー国が、前増資期間より多く拠出誓約してもらうためには、ドナー国と日々話し合いを重ねて信頼関係を築き、積極的にグローバルファンドの支援成果を共有することが重要となります。  

グローバルファンドはジュネーブ以外にオフィスはないため、いくつかの主要ドナー国や距離が遠い主要ドナー国に、国内でグローバルファンドの知名度を高めながら、アドボカシーを担当するグローバルファンド支援委員会(Friends of the Global Fund)があります。グローバルファンド支援委員会は、グローバルファンドとは独立した組織です。担当の日本とオーストラリアには、それぞれグローバルファンド支援委員会があり、日頃からグローバルファンドの最新情報などを共有し、緊密に連絡を取り合っています。また毎年幹部のドナー国への訪問を連携しながら企画・準備します。
 
この数年増えているのが、大きな国際会議のハイレベルのイベントの企画・実施です。日本政府と共催で、2015年9月、ニューヨークで持続可能な開発のための2030アジェンダ(SDGs)が採択された際、「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)への道」のイベントや2016年8月ケニアで開催された第六回アフリカ開発会議(TICAD VI)のイベントとして「アフリカにおけるUHC」を開催しました。二つのイベントには、安倍総理に出席して頂き、挨拶を行って頂きました。このようなハイレベルのイベントは、同じ渉外局の政治・市民社会アドボカシー部の同僚と連携しながら、支援している開発途上国の元首や保健大臣たちに参加して頂くよう働きかけます。

 

毎年秋にグローバルファンドの事務局長が訪日しています。その際、事前準備と同行。

Photo: JCIE
 

仕事の多くは、ジュネーブの事務局でのデスクワークですが、数年に一度、グローバルファンド支援委員会と共催で、ドナー国の国会議員のグローバルファンドの支援国の視察を企画・実施をしています。視察を通じて、予算の決定権を持つ国会議員に、自国の拠出金がグローバルファンドを通じてどのような成果をあげているかを実地で確認してもらい、開発途上国の政府関係者やコミュニティの人たちとの対話から現地の課題を把握してもらうようにしています。視察に同行して自分の目でグローバルファンドの支援を受けて実施中のプロジェクトを直接見ることは、ドナー国に対して説得力をもって交渉するために重要なことだと思っています。

 

2016年、4名の国会議員とインドネシアと東ティモールで、
グローバルファンド支援プログラムの視察を実施。

 

Q3 国際機関で働こうと思ったきっかけは何ですか。

 

フジテレビを退職した後、2年ほどニューヨークのNHK総局でリサーチ・コーディネーターを勤め、国連に関する2本のNHKスペシャルの企画・制作に関わったのをきっかけに、開発での仕事をしたいと考え始め、ハーバード大学ケネディスクールに入学しました。しかし大学院卒業後、残念ながらそのような仕事に携わる機会がありませんでした。しかし,どこか自分の中で休止していた希望だったと思います。世界金融危機が発生した後の2009年頃、ニューヨーク大学のコンティニュイングエデュケーションでファンドレイジングの勉強をしながら、転職活動をしていた際、新しい官民パートナーシップのグローバルファンドを知り、民間セクターの資金調達担当官の空席ポストに応募し、採用されました。国連システム内の機関は、フィールドの経験やJPOの経験を通じて、ある程度の年齢で入職しないと入ることが難しいと思いますが、グローバルファンドは、まさに官民パートナーシップの機関で、私のような民間セクターの経験者も貢献できる組織です。

 

Q4 これまでにどのようなキャリアを歩んで来られましたか。

 

グローバルファンドに入職する前は、民間セクターで働いてきました。父の仕事で6歳から渡米し、小・中・高の教育はニューヨークで受けています。大学卒業後、フジテレビ本社に入局して7年にわたり報道記者と情報番組チーフ・ディレクターとして国内と海外のニュースの取材を担当しました。パリ支局で朝のグローバルニュース番組を担当したのをきっかけに、もう一度海外に住んで仕事をしたいと思い、再び渡米しました。ニューヨークのNHK総局でリサーチ・コーディネーターを勤めた後、ハーバード大学ケネディスクールの行政学修士課程で2年学び、夏のインターンをソニー本社のコーポレート戦略で過ごしました。卒業後、ソニーのアメリカ本社の新規事業開発部で、ベンチャー・キャピタル・ファンドを担当した後、北米投資家に向けてソニーの経営状況や業績動向に関する情報を発信するインベスター・リレーションズ・スポークスマンを勤めました。その後、ニューヨークのモルガン・スタンレー証券本社に勤務し、日系事業会社のグローバル・インベスター・リレーションズのアドバイス・支援を勤めました。

約20年の民間セクターで培ったコミュニケーション、新規事業開発、戦略的パートナーシップのスキルと経験をもとに、2010年にグローバルファンドに入職し、民間セクターの資金調達担当官として富裕層と財団を対象とした資金調達戦略と革新的ファイナンス・プロジェクトに携わった後、2014年から渉外局のドナーリレーションズ担当官を務めています。

 

フジテレビ時代の報道記者の経験を活かして、2016年8月、
ケニアで開催されたTICAD VIで安倍昭恵総理夫人に
エイズ啓蒙活動についてビデオインタビューし、
グローバルファンドのウェブサイトに記載。



Q5 国際機関や所属機関を目指す方へのメッセージをお願いします。

 

グローバルファンドには、100ヶ国以上出身の人々が働いており、学歴や経験、スキルといった点でとても多様です。グローバルファンドの主な業務は、国別支援プログラムの管理、パートナーとの連携、成果のモニタリング及び評価、資金調達、アドボカシーなどです。保健分野の専門性は必ずしも必要ありません。公衆衛生、公共政策、開発学、国際協力などの分野での実務経験を持つ人もいれば、コンサルタント会社、IT関連企業、金融機関、PR企業、物流関連企業、医薬関連企業など、民間セクター出身の人もいます。

重要なのは、コミュニケーションと外交スキルだと思います。仕事は英語で行われていますので英語能力は重要ですが、ドナー、支援する開発途上国、テクニカルパートナー、市民社会などに対して、自分の考えていることを効果的に伝えられること、さらに支援プログラム内容や資金調達などの交渉をする際、外交スキルが大切です。

グローバルファンドのリクルートメントは非常に公正です。このような新しい官民パートナーシップのグローバルファンドで働きたいと思われる方は、空席ポストのTerms of Referenceに必要と記載されている経験やスキルに対して、自分の経験や貢献できることを効果的にハイライトした履歴書とカバーレターを作成することが重要です。人事部と連携して、定期的に東京で、グローバルファンドへの就職を希望する日本人向けにキャリアセミナーを実施していますので、グローバルファンドに関心のある方は、是非ご参加ください。
(※グローバルファンドの職員採用ページは こちらです。)



1日の仕事の流れ。


07:00      自宅でメールチェック。担当のドナー国(日本・オーストラリアなど)との時差があるため、至急対応が必要な案件がないかチェック。電話対応が必要なものは、自宅から電話。
09:00      出勤。
09:00-11:00  メールや電話で、担当のドナー国やグローバルファンド支援委員会からの質問や要望を、グローバルファンド内の担当部署に照会し回答。
11:00-12:30  部内スタッフとミーティングで各ドナーの近況報告や企画中の会議、イベント、出張などの情報を共有。
12:30-13:30  昼食。
13:30-15:00  支援国の持続可能性の強化、自立への移行準備、国内資金の増加に関して意見交換・情報共有するための事務局内の様々な部署の代表者が集うワーキング・グループの会合に参加。
15:00-18:30  集中力が必要な資料やブリーフィング・メモを作成したり、内部書類を読む。
18:30      退社。

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